★ 灯火

2007.04.20(Fri)

…約1名に過剰な期待をされてしまったのであげてみます…(笑)


※この話はマガ○ン本誌Trick:162を元にしています。
本誌を読んでない方はネタバレになりますので、充分ご注意下さい。

内容については妄想&捏造しまくりなので、本編からは逸脱していると思われます(笑)


携帯からご覧の方は隠し文字になりません。
ご注意下さい。



↓以下注意↓

















↓本文ここから




葛馬が病院に担ぎ込まれたと聞いた。

俺等が『眠りの森』と対峙してる間に、外は大変な騒ぎになっていたらしい。

事の首謀者は『武内 空』そして双児の弟、通称ニケこと『武内 宙』。
【風の玉璽】を奪い去った奴等。



葛馬は奴等のバトルに巻き込まれ、ひとり、生還した…。



詳しい状況は判らない。
全てを観て来た筈の張本人が錯乱状態にあって、まともに話が出来る状態に無いという話だった。



俺とカラスは連絡を受け、病院へと急行した。





連絡を寄越して来たのはアキラで、唯一俺と葛馬の関係を知る人間。
気遣わしげに俺を見つめるアキラを無視して病室へと急いだ。

病室に向かう途中、アキラに葛馬の状態について聞かされた。
『まるで手負いの獣みたいで手がつけられない。治療しようにも触らせようとしない』らしい。
あまりにも暴れる為、今は個室に半隔離状態で放置されていると言っていた。


院内の廊下を走り病室に駆け込むと、中は真っ暗でベッドは…蛻の殻だった。
「…カズ?何処だ?!」
カラスが呼び掛けるが反応は無し。
手探りで壁を探り、部屋の灯を点ける。






ガタンッ!



灯に照らされた瞬間、部屋の奥から物音が響いた。
ベッドの向こうに回り込み、音のした方に目をやる。
ベッド脇に置かれた棚と壁の間…その狭い隙間に蹲る様に膝を抱えた葛馬が居た。

「カズ…?」
カラスが声をかけ、近付いていく。
肩に手を掛けようとした瞬間、びくり!と反応し、伸ばされた腕を振り払い、裸足の足が蹴りを放つ。
その蹴りをまともに喰らったカラスが吹っ飛び床に叩き付けられた。

「ッ…!カズ、テメェ…何すんだっ!!」
思わぬ反撃に合い、逆上したカラスが葛馬に向かって突っ込んで行こうとする。
それを後ろから羽交い締めにしたのはアキラだった。


「っ!は、なせっ!」
「彼は今、まともな状態じゃないんだ!だから落ち着けっ!!」
頭に血が昇った状態のカラスを押さえつけ、そのまま病室の外に連れ出していく。
無理矢理引き摺り出され、喚き散らす声が廊下に響く。それも徐々に遠ざかり、やがて聞こえなくなった。





「……………」
病室に取り残された俺は、立ち尽くしたまま葛馬を見つめた。


『手負いの獣みたいで手がつけられない』


アキラの言葉が脳裏を過ぎる。

今の葛馬は正しくそのものだった。



目は落ち窪み、傷だらけの身体を抱え、近寄る事さえ赦さない。
少しでも触れたら壊れてしまいそうな…危うい均衡の上で、必死に何かを守ろうとしている様だった。

そんな相手にどんな言葉を掛けて良いか判らず俺は戸惑う。
長年一緒ににツルんでた、あのカラスでさえまともに認識出来なくなってるのに…。





「葛馬…」
刺激しない様に、そっと声を掛けてみる。
呼び声にぴくりと反応し、僅かに顔を持ち上げた。
ニット帽で半ば隠された目が宙を彷徨い、やがて俺を捕らえた。
ギラつく視線で睨み据えたまま、キツく自分の身体を掻き抱く。

そこで初めて、葛馬が腕の中に何かを抱えているのに気付いた。





(…A・T?)




良くみるとそれは確かにA・Tだった。
けど、腕に抱えてるソレは…葛馬のものじゃなかった。

あのA・Tには見覚えがある…。





「スピット・ファイア……」



ビクンッ!


俺の言葉に過剰なまでの反応を示し、身体を強張らせ、ますますキツくA・Tを抱き締める。





(何でコイツが奴のA・Tを…?)

俺の中に疑問が沸き上がる。
アキラの話では、あの場に居たのは、武内兄弟とスピット・ファイア、それにホモ野郎とゴーゴン。


…生き残ったのは、葛馬だけ…。





「まさか……」
呆然と呟き、無意識に葛馬に手を伸ばす。


ばしんっ!!


爆ぜる様な音と共に手を振り払われ、体勢を崩される。
倒れ込みかけたガラ空きの腹部を狙い、容赦ない蹴りが飛ぶ。
「っ…!」
ギリギリの所でそれを躱し、叩き落とした葛馬の足を体重をかけて抑え込む。
のし掛かったまま顔を両手で固定して、無理矢理口唇を重ねた。



ガリッ!


「ッ!」
食い千切られそうな勢いで口唇に歯を立てられ、口腔内に血の味が拡がる。
痛みを無視して更に強引に押しつけると、今度は腕で俺の身体ごと引き剥がそうとしてきた。
もがく腕を掴み、壁に縫い付ける様に固定する。
自らの身体を考慮しない、力任せの腕力に負けそうになりながら抵抗が弱まるまでじっと耐えた。



「は……っ」
完全に抵抗が無くなるまで待ち、ゆっくりと口唇を離し、覗き込んで視線を合わせる。

「ァ、ギ……?」
戸惑う様に揺れる視線と震える声に、堪らず葛馬を抱き締めた。
「ぁ……お、俺…っ!何も、できなかっ………っ」
絞り出された悲痛な叫びが室内に響く。
「み、んな、ボロボロで……っ!なのに、オ…レ、俺だけ……っ!」
「違う…」
「ぁ…アイツ等、無茶苦茶強くて、でも俺、なんも出来なくて……!」
「違う…!」
「オ、レだけ…俺ひとりだけ、残っ………ッ!」
「違うっ!そーじゃねぇだろッ!!」
震えながらしがみつく葛馬をキツく抱き返し、耳元で告げる。
「違うだろ…?テメーは、逃げたんじゃねぇ…。ちゃんと、闘った。今、お前が此処に居るのは、アイツ等の意志だ。」
ボロボロになった葛馬の姿を見れば判る。
コイツなりに必死で抗おうとした事が。
何も出来なかった訳じゃない…。
させて貰えなかっただけだ。

多分、無理矢理あの場から引き離され、【炎の玉璽】を託されたのだろう…。

たとえ歯向かったとしても、一瞬でカタがついていたはず…。
それよりは…僅かな希望だろうと、懸けてみる気になったんだろう…。

あの時、俺が感じたのと同じ様に…コイツの中に眠る『可能性』に。



幾度も自分を責める言葉を吐く度に、違うと否定してやりながら、震える葛馬をそっと抱き締め、落ち着くのを待つ。
暫くそうやっていると、緊張していた身体から、徐々に力が抜けて行くのを感じた。



「…今だけなら」
ゆるゆると背中を撫で、ニット帽から覗く髪に指を絡ませながら、ポツリと呟く。
「泣いてもイイんだぜ…?」
その言葉に腕の中の葛馬が小さく反応した。
「…その代わり、明日からはちゃんと、自分の足で立て。そんで、テメーに託された【玉璽】の意味を、重みを…しっかり受け止めろ」




俺にしがみつく腕にまた力がこもる。
堪えていたモノが堰を切って溢れ出した様に咽び泣く葛馬を、ただ無言で抱き締めた。




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